シアターリミテ

シアターリミテ|京都を拠点に活動する演劇集団

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第7回勉強会Study group

ドラマ「北の国から」を語る

2020年9月26日(土)担当:長谷川 源太

今回のテーマ

ドラマ「北の国から」は、1981年10月~1982年3月までフジテレビ系列で放送された家族ドラマだ。 脚本は巨匠 倉本聰。 僕はこのドラマが大好きで、劇団の飲み会で「北の国から」愛を熱く語ったことがあるらしく(もちろん覚えていない)、劇団員から勧められて企画した次第である。

まず準備、連続ドラマ24話を初めて見る

「北の国から」は連続ドラマ24話が放映された後、「北の国から '84夏」から「北の国から 2002遺言」まで、8本のスペシャル版が放映されている。あれだけ熱く愛を語った私だが、準備する段に至って、スペシャル版しか見たことがなく、肝心の連続ドラマ24話は、ほぼ見ていなかったことに気が付く(汗)。

早速ツタヤで借りて来て、24話を見始める。CMを除いたドラマ本編が1本45分として、掛けることの24話分、すなわち約18時間をこれに費やしたことになる。更にスペシャル版8本も借りて来て、これも全部見た。盆明け以降、「北の国から」三昧の日々が1箇月。しかし少しも苦ではなかった。むしろ見ているうちに、田中邦衛演じる五郎さんや、吉岡秀隆演じる純、中島朋子の螢と一緒に過ごしている気持になり、最後の「遺言」を見終わったころには、自分が五郎になりきって、明日にも自分で井戸を掘ろうとしていた(実際、YouTubeで井戸の掘り方の動画を見まくっていた)。我ながら単純である。

さて当日、ドラマを書く側、見る側、様々な見方

当日は、劇団あしたの会から、同じく「北の国から」愛の熱い山脇立嗣さんが参加。書く側の目線から感想や意見をいただくことになった。

主な感想は

  • ・れい(横山めぐみ)と純が納屋で雨宿りした際、中学生の二人が濡れた制服を脱いで乾かすシーンが男性目線のようであり得ないと感じた。('87初恋)
  • ・東京から遊びに来たつとむが、当時流行り始めたパソコンを持って富良野に来るシーン。いくら何でもデスクトップパソコンを持ってくるだろうか('84夏)
  • ・オンエア当時、バブル景気に向かう社会の中で、泥の付いた一万円札が意味するものは何か?('89帰郷)

など、様々な角度から感想や疑問が出て来て、それを他の参加者が自分なりの解釈を述べました。 勉強会はトイレに行く時間もないくらいの盛り上がり。

勉強会の最後は、なんと山脇さんのギターの弾き語りで、「北の国から~螢のテーマ」の熱唱。心にしみるひと時でした。

振り返って、劇作家として反省したこと

倉本聰のシナリオは面白く、シナリオ自体が読み物としてしっかり成立していることに改めて気が付いた。それは倉本聰が「樹は根によって立つ。されど根は人の目に触れず」と言っているように、作品を書くにあたって登場人物の履歴や設定をしっかりと定めており、物語が根っこから上の「樹」の部分として枝葉を伸ばしているからである。当たり前のことだが、なかなか詳細な設定はやってみると難しい。しかしその難しいことから目を背けていては、書き手として成長はない。今回の勉強会を契機に、これまでの自分の劇作法を見直し、しっかり根の張った物語を紡いでいきたい。

しかし、何よりも感じ入ったのは、今を生きる私たちが単純に何でも自分でできることを他人に簡単に金で依頼する社会構造だ。パソコンの不具合も、家の掃除も、果ては電球の玉切れすら誰かに金を払ってやってもらおうとする。何と安直な暮らし方か。ちょっと覚えれば自分でできることを簡単に放棄している。私が井戸を掘りたくなったのは、自分の安直な暮らし方への猛烈な反省だった。そう信じたい。

感想(郷より)

「北の国から」はあまりにも有名過ぎて、バラエティ番組のモノマネなどで否が応でも情報が入ってきており、些か食傷気味であったので、今回の課題であるスペシャル版3本の視聴は少々憂鬱であった(ココだけの話)。 しかし、さすが倉本先生「ちょっとそれは無いんじゃない?」なんていうシーンも含め、見始めると引き込まれて3本一気に見てしまった。

さて、様々なシーンの感想を語り合う中、今回いちばん感じたことは今更ながら「観る角度が違うとこうも変わるのか!」ということ。年齢を重ねると尚更に物事を一つの角度で見がち(私だけかもしれないが)で、思い込みが激しくなるような気がする。他の方の「それは、こういうこと(背景)があるからこう(いう結果になる)なのかもしれないよ」などと言う意見を聞くと「な〜るほど、そうだったのか!」と感心しきりであった。 ドラマだけでなく私生活でも決めつけないで、違う角度から見なくちゃと反省した次第である。

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ミニシアターのような独立性と表現性の高い舞台を追求。

社会人劇団として、同年代の大人の観劇に耐えうる社会性と娯楽性を追求した舞台を目指しています。
一見分かりやすそうでありながら、すべては分からない。
映画で言えばシネコンのような大衆的なものではなく、
ミニシアターのような独立性と表現性の高い舞台を追求しています。

シアターリミテ 主宰 長谷川 源太